2016/02/08

社説 指定廃棄物処分 地域に即した柔軟策で


2016年2月8日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160208/ddm/005/070/016000c 

東京電力福島第1原発事故で出た放射性物質に汚染された指定廃棄物の処分問題で環境省は、茨城県に対し、汚染ごみを現在の保管場所に置き続けることを認めた。国の費用負担で保管場所をコンクリート壁で囲うなど、安全対策を強化する。

また、放射能濃度が自然減衰して基準を下回った場合、自治体が通常のごみとして処分することを可能にする全国共通の手続き案も示した。

環境省は、既存の処分場に余裕がない宮城、茨城、栃木、群馬、千葉の5県で各1カ所ずつ、国の責任で処分場を造る計画だったが、候補地では反対が相次ぎ、進んでいない。

そうした事情を踏まえれば、今回の対応は現実的な解決策と言える。だが、各地で保管状況は大きく異なる。環境省は、地域の実情に即した柔軟な対策を取る必要がある。

指定廃棄物は、原発事故で飛散した放射性物質に汚染された廃棄物のうち、放射性セシウムの濃度が1キロ当たり8000ベクレルを超えるものだ。自治体の申請に基づき、環境相が指定する。稲わらやごみ焼却灰など12都県に計約17万トンある。各県1カ所に集約するのは、自然災害への備えや保管者の負担を考えてのことだ。

茨城県の指定廃棄物の大半は公的施設で保管されている。群馬や千葉も同様で、分散保管を継続しても安全性に大きな問題はなさそうだ。

茨城県には約3600トンの指定廃棄物がある。自然減衰により、今から10年後には基準を超える廃棄物は約0・6トンになるという。

環境省の指定解除手続き案では、指定廃棄物の濃度が基準を下回っていることを確認した上で、解除するかどうか国と自治体が協議する。解除後に自治体が廃棄物を処分する場合は、国が費用を負担する。

環境省は通常の方法で安全に処理できるというが、廃棄物の放射能がゼロになるわけではない。指定解除や処分方法について、地域住民の理解を得る手順が欠かせない。

宮城と栃木の指定廃棄物は稲わらなどが中心で、6割以上を個人が保管している。屋外にあるケースも多く、分散保管に対する住民の懸念も根強い。一方、両県では、処分場の候補地となった自治体や住民が強固に建設反対を唱えており、処分場建設のめどは立っていない。

環境省は当面、自治体が管理する施設に一定量を集約するなど、保管体制の強化を急ぐべきだ。

福島県内の指定廃棄物は昨年、富岡町の既存の処分場を国有化して処分することを地元が受け入れた。

これを受け、他県の指定廃棄物も福島に集約することを求める意見が出ているが、福島の人々の理解を得ることは難しいだろう。

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