2016/02/05

原発事故の指定廃棄物 茨城は分散保管を継続

2016年2月4日 NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160204/k10010397361000.html 

東京電力福島第一原子力発電所の事故で発生した放射性物質を含む指定廃棄物を巡り、環境省は茨城県に限って現在の場所で分散して保管を続け、放射性物質の濃度が国の基準を下回れば指定を解除して一般の廃棄物として処分できるとする新たな方針を明らかにしました。

東日本の12の都県におよそ17万トン保管されている指定廃棄物について、環境省は5つの県に新たに処分場を建設する計画ですが、地元の反対などでいずれも建設のめどは立っていません。

このうち、茨城県では14の市と町におよそ3500トンが保管されていて、地元自治体が現在の場所での保管の継続を求めていました。

4日、水戸市で開かれた環境省と地元自治体の会議で、環境省は茨城県に限って、放射性物質の濃度が国の基準を下回るまで現在の場所で分散して保管を続けることを決めました。そのうえで、茨城県以外の都県も含め、基準を下回った指定廃棄物は一般の廃棄物として従来の処分場で埋め立てなどの処分ができるとする新たな方針を明らかにしました。

放射性物質の濃度は時間とともに自然に低減することから、環境省は茨城県内ではすでにおよそ70%の廃棄物が基準値以下になっていて、10年後に基準値を超える廃棄物は0.6トンにとどまると推計しています。

環境省は茨城県以外の4県では、引き続き県内1か所に集約する方針で、処分場の建設に地元の理解を得たい考えです。

12都県で保管 合わせて17万トン

指定廃棄物は、東京電力福島第一原発の事故で発生した放射性物質を含む汚泥や焼却灰などで、放射性物質の濃度が1キロ当たり8000ベクレルを超えるものです。

環境省によりますと、去年12月現在で、12の都県に保管されていて、その量は、合わせておよそ17万トンに上ります。
内訳では多い順に、福島県がおよそ14万2100トン、栃木県がおよそ1万3500トン、千葉県がおよそ3700トン、茨城県がおよそ3500トン、宮城県がおよそ3400トン、群馬県がおよそ1200トン、新潟県がおよそ1000トン、東京都がおよそ980トン、岩手県がおよそ480トン、静岡県が8.6トン、神奈川県が2.9トン、山形県が2.7トンとなっています。環境省は福島県以外で保管量が多い、宮城・栃木・千葉・茨城・群馬の5つの県に、それぞれ処分場を建設する計画ですが、地元の反対などでいずれも建設のめどは立っていません。


指定廃棄物の分散保管「苦渋の決断」 「最後まで国が責任を」処分方法など課題山積 /茨城

2016年2月5日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160205/ddl/k08/040/279000c

東京電力福島第1原発事故に伴い発生した指定廃棄物の分散保管継続を環境省が容認したことについて、県内の首長からは「大きな第一歩だ」(小田木真代・高萩市長)と評価する声が上がった。ただ、放射性廃棄物の保管・処理だけに「苦渋の決断」(中山一生・龍ケ崎市長)というのが本音。指定解除後の処分方法や、住民への説明の仕方、責任の所在など、多くの課題も残されている。【玉腰美那子、蒔田備憲、安味伸一】

環境省は「災害などに備えた長期にわたる管理を確実なものにするため、県内1カ所に集約し管理することが望ましい」との方針を示してきた。だが、水戸市内で4日に開かれた14市町長会議で井上信治副環境相は「分散保管をこの場で決定したい」と踏み込んだ。出席した14市町長は「分散保管の継続で一致している」などと了承した。
会議の冒頭、環境省の方針を示す井上信治・副環境相(中央)
=水戸市千波町の水戸プラザホテルで
もっとも、大歓迎というわけではない。龍ケ崎市の中山市長は「これまで国の責任で処理するという言葉を信じてきた。我々が望んだことではなく、苦渋の決断、苦肉の策だ」とくぎを刺し、「一刻も早く、住民説明会の段取りを付けてほしい」と国に求めた。

分散保管継続後の道筋が曖昧な点を懸念する声もあった。環境省はこの日、指定解除後は一般的な廃棄物と同様に既存の処分場で処理するとの方針を示したが、豊田稔・北茨城市長は「既存の処分場を持っていない自治体はどうするのか。他の自治体の廃棄物を受け入れるとなると住民の反対運動もあるだろう。処分場決定の振り出しに戻らないか」と懸念を表明。小田木・高萩市長は「既存の処分場では、汚染濃度が3000ベクレルでも受け入れないところもあると聞く。8000ベクレルを下回ったからと自治体の責任で処理しろというのは無理がある」と最後まで国が責任を持つよう求めた。小川春樹・日立市長も「慎重に住民に説明しながらやっていかなければいけない」と地元への説明に時間がかかるとの見方を示した。

住民の不信も根強い。守谷市けやき台の元小学校教諭、丸町芳夫さん(72)は「放射性物質を出したのは東京電力。東電が責任を取るという意味でも、原発敷地の地下にコンクリートで覆い、屋根をかけて遮蔽(しゃへい)した施設を作って保管すべきだ」と指摘する。

14市町15カ所で継続
県内には14市町15カ所のごみ処理施設などに、計約3600トンの指定廃棄物が保管されている。放射性物質に汚染された「飛灰」や「焼却灰」が多い。放射性セシウムの濃度は時間とともに減るため、今年3月にはこのうち7割が、通常のごみと同じ処理が可能な1キログラムあたり8000ベクレルを下回る見込みだ。

日立市宮田町の清掃センターには、県内最多となる1260トンの指定廃棄物が保管されている。被災から5年を迎えようとしている現在も、1638袋の黒い袋が白い防水シートに覆われたままだ。

2012年の民主党政権時、環境省は「県内1カ所保管」との方針のもと、最終処分場として高萩市を指定した。だが地元の猛反発を受けて撤回。「地元住民のことを考えると、どこも手を挙げられない」(保管市長)状況となり、1カ所の選定は極めて困難な状況になった。

昨年4月の14市町長会議では「分散保管の継続」でほぼ意見が一致。国に容認するよう求めてきた。【玉腰美那子】

県内の指定廃棄物の保管状況◇(未指定分含む)

自治体名    保管者・場所   15年12月末保管量 品目  全ての廃棄物が8000ベクレルを下回る年数(2011年から)

日立市     市・ごみ処理施設 1260.2トン   飛灰   9年後

ひたちなか市  県・下水道事務所  828.8トン   焼却灰  8年後

        市・ごみ処理施設  152.0トン   飛灰   8年後

守谷市     市・ごみ処理施設  611.0トン   飛灰  13年後

茨城町     民間・業者の倉庫  226.7トン   汚泥   5年後

龍ケ崎市    市・ごみ処理施設  181.5トン   飛灰   6年後

阿見町     町・ごみ処理施設  159.4トン   飛灰   7年後

土浦市     県・下水道事務所   97.0トン   焼却灰 10年後

かすみがうら市 市・ごみ処理施設   62.0トン   飛灰   4年後

北茨城市    市・ごみ処理施設   45.0トン   飛灰   4年後

小美玉市    市・ごみ処理施設   16.0トン   飛灰   4年後

取手市     市・市役所敷地内    2.5トン   汚泥  13年後

高萩市     民間・業者敷地内    0.4トン   稲わら 30年以上

鹿嶋市     民間・業者で保管    0.3トン   飛灰   4年後

牛久市     民間・業者の物置    0.2トン   汚泥  30年以上

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