2016/11/05

甲状腺がん/切除範囲は小さい手術 多くが早期に社会復帰

2016年11月5日 朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASJC46FL8JC4UBQU004.html

甲状腺がんに対して行われる手術は、その組織型や病期によって切除範囲が異なり、がんがある側の甲状腺の半分を切除する「葉切除術」、その反対側の2分の1か3分の1もあわせて切除する「亜全摘術」、甲状腺全てを切除する「全摘術」に分類されます。

がんの性質がおとなしいという理由から「できるだけ切除範囲は小さく」というのが一般的ですが、一度手術したところは癒着が生じて再手術が難しいので、甲状腺のまわりのリンパ節は甲状腺を切除する際に一緒に郭清(取り除くこと)します。甲状腺周囲の臓器にがんが及ぶ場合はその臓器も切除し、頸部(けいぶ)のリンパ節に転移があれば、その領域も郭清します。

ほとんどの場合は「葉切除術」と「甲状腺周囲リンパ節郭清」を行うことになります。手術は全身麻酔で行われ、時間は約2時間です。鎖骨の少し上を襟上に7センチ前後切開しますが、縫合によってはしわができてしまったかなという程度に目立たなくできます。その傷の脇にドレーンという血抜きの管が数日間入るので、ここにも傷はできますが数ミリ程度です。翌日から食事や歩行は可能で、入院期間は通常1週間以内です。

合併症で最も生活に影響すると言われているのは、声がれと誤嚥(ごえん)で、約3%程度の確率で起こります。これは甲状腺と接している神経が損傷してしまった場合に声帯が動かなくなって生じますが、声帯が動いていても「高い声が出ない」などの質的な変化をきたすこともあります。さらに低い確率ながら甲状腺ホルモンやカルシウムの低下をきたすこともあり、飲み薬の服用が必要となります。

首やのどの違和感(突っ張る、感覚が変、のみ込み時に引っかかるなど)は必ず出ますが、生活に支障があるほどではなく、徐々に消失することがほとんどです。そのほかでは、美容、食事、運動を害する後遺症はほぼ生じず、早期に社会復帰できる方が多いです。
新潟大学医歯学総合病院 松山洋医師(耳鼻咽喉・頭頸部外科)

<アピタル:医の手帳・甲状腺がん>
http://www.asahi.com/apital/healthguide/techou/ 

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