2015/04/01

福島の猫が主人公…絵本の読み聞かせ広がる


毎日新聞 2015年04月01日 
http://mainichi.jp/select/news/20150401k0000e040249000c.html
 
東京電力福島第1原発事故で故郷を奪われた悲しみや復興への願いなどを動物たちの目線で分かりやすく伝えた絵本「とどけ、みんなの思い〜放射能とふるさと〜」(新日本出版社)の読み聞かせが、全国の教育現場に広がっている。絵本の作者で、自らも各地の小中学校などで読み聞かせを続けている東京都多摩市の絵本作家、夢ら丘実果(むらおか・みか)さん(47)は「関心が薄れつつある福島の問題について、改めて考えてほしい」と願う。

 
主人公は、原発近くの家で飼われていた猫のミャーサ。事故で一家は遠く離れた街へ避難を余儀なくされ、ミャーサは故郷に置き去りにされた牛や豚、ニワトリなど仲間の動物たちの苦しみを思う。「こんな悲しいことが二度と起きないように」と事故を後世に語り継ぐことを誓う−−という展開だ。

 
夢ら丘さんは、友人を自殺で失った経験から2007年に命の大切さを伝える絵本を出版し、自殺予防として全国で読み聞かせに取り組んできた。原発事故の半年前には福島市内の中学も訪ねていた。その時親しくなった保護者から、避難生活の大変さや放射能の影響におびえる苦悩を聞き、制作を決めた。「原発の賛否を問うのでなく、故郷や家族の大切さを見つめ直し、自分に何ができるか考えるきっかけにしてもらえる作品にしたかった」と語る。

 
未来に希望が持てる前向きなストーリーともなるよう工夫を重ね、14年2月に絵本は完成。作画は、親交のある福島県三春町出身の画家、渡辺あきおさん(65)が担当。本の帯には同県郡山市出身の俳優、西田敏行さん(67)が推薦文を寄せた。

 
出版から1年。教員らによる読み聞かせの輪は、原発を抱える北海道、宮城県、鹿児島県などをはじめ全国の小中学校や保育園に広がった。夢ら丘さん自身も首都圏を中心に読み聞かせを続けており、静岡県や香川県の学校にも足を運んだ。「事故を決して忘れません」「ふるさとと家族を守りたい」。夢ら丘さんのもとには、子どもたちや教員からたくさんの感想文やメールが届いている。

 
夢ら丘さんは「原発事故は決して忘れてはいけない出来事。将来を担う子どもたちはもちろん、大人にも読んでほしい」と話す。絵本はA4判変型34ページ、1500円(税別)。




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