2015年12月05日 毎日新聞http://mainichi.jp/area/fukushima/news/20151205ddlk07040395000c.html
◇風評被害さらに/若い人戻らぬ/計画見直して
原発事故に伴う県内の指定廃棄物を富岡町の産業廃棄物処分場「フクシマエコテッククリーンセンター」を国有化して最終処分する国の計画について、4日に受け入れを伝えた内堀雅雄知事や富岡、楢葉両町長に対し、丸川珠代環境相は「安全対策を徹底し、住民に丁寧に説明していきたい」と強調した。その説明を受ける側の両町の住民からは「風評被害を受けて帰還の妨げになる」「国の管理を監視する第三者委員会が必要だ」と厳しい意見が相次いだ。【浅田芳明、栗田慎一】
富岡町からいわき市に避難する司法書士の渡辺和則さん(41)は「線量の高い帰還困難区域に最終処分場を作るべきだ」と線量の比較的低い地域にある民間処分場での受け入れを批判する。「負のイメージで風評被害が加わり、帰還の妨げになる。町は受け入れを決めた以上、風評を払拭(ふっしょく)できるぐらいの地域振興を展開してほしい」と話した。
同市に避難する富岡町商工会理事の渡辺正義さん(64)は「復興のために受け入れはやむを得ない」と一定の理解を示す一方、「負のイメージは孫の代まで続く。若い人たちが果たして町に戻るかどうか。限界集落になりかねない」と不安を漏らした。富岡町から避難し、郡山市内の仮設住宅で暮らす50代の男性は「国は最終処分場を安全、安心というが、原発事故の例もあり信用できない。国の管理を厳重に監視する第三者的な委員会が必要だ」と訴えた。
エコテックの搬入路がある楢葉町の上繁岡地区と繁岡地区。搬入路付近の道沿いには「搬入断固反対」ののぼりが立つ。「必要性は分かる。しかし、住民が近くに住んでいる場所をなぜ選んだのか。交付金はいらないから、計画を見直してほしい」。いわき市の仮設住宅に住む上繁岡地区の塩井淑樹さん(64)はぶぜんとして語る。
コメ農家だったが原発事故の風評被害を背景に花卉(かき)栽培農家に転じ、今年8月に町内で栽培したトルコギキョウの出荷を始めたばかり。「帰町意欲も低くなる。町民全体の問題なのに、環境省は搬入路のある二つの地区住民にしか説明会を開いていない」
だが、町内の他の地区住民の関心は低調だ。町役場近くに住んでいた、いわき市の仮設住宅で暮らす鈴木クニ子さん(81)は「計画があろうとなかろうと、今の町に帰る町民はほとんどいない」ときっぱり。震災前同居していた長男家族がいわき市への移住を決め、「1人で町に戻るなんてありえない」と語る。
今年4月の準備宿泊から町に戻った男性(75)は「帰町したのは高齢者ばかり。富岡町も避難指示が解除されれば同じ状況になる。交付金は町に戻った高齢者の生活を支える福祉や医療の充実に充ててほしい」と話した。
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