http://mainichi.jp/shimen/news/20151204ddm012040014000c.html
東京電力福島第1原発事故による避難が続く福島県川俣町山木屋地区で、名物だった納豆の生産が年内に再開する。手がけるのは地元の自動車部品製造会社「カミノ製作所」。同地区は来春の避難指示解除と帰還を目指すが、一足先に生産を再開する理由を、神野三和子社長(62)は「避難指示区域でも安全な食品を作れることを示し、帰還する人を勇気づけたい」と力強く語る。
1972年に山木屋地区で創業した同社の本業は、自動車のオイル漏れを防ぐ微小なスプリング部品の製造。細かい作業で目を酷使するため、定年後でも従業員が働ける事業として、当時社長だった神野さんの夫学さん(75)が98年から敷地内に専用の工場を設け納豆生産を始めた。
北海道産の大豆で2銘柄を作り、地元や福島市内の店舗などで販売。客からは「甘みとコクがある」と好評だった。しかし、原発事故を受け部品工場は福島市内に移し製造を再開したが、納豆は休止したまま。その間、再開を望む声が相次いで寄せられた。
山木屋地区は避難指示解除準備区域と居住制限区域に指定され、日中の出入りや製造業などの事業活動が可能。当初は避難前の工場で納豆を生産することに不安もあったが、背中を押したのは病気で社長を退いた学さんの「創業の地に戻ろうよ」との一言だった。「地元の企業がまず動き、地域を活性化させたい」と腹を決めた。
避難指示区域でやるからには安全対策を徹底した。外気を遮断するクリーンルームを工場内に導入。使う水からは放射性物質は検出されていないが、不純物の除去装置を二重に設置した。完成した製品も放射性物質を検査する。神野さんは「日本一安全な納豆を作るつもりでやっていきます」と胸を張る。12月中旬以降に北海道産の大豆を使った納豆の販売を開始する。福島県産の大豆を使った新たな納豆も試作中で、来年1月には販売する予定だ。問い合わせは神野さん経営の販売会社「こだわりや本舗」(電話024・524・2161)。【岡田英】
試作中の納豆が製造ラインを流れるのを見守る カミノ製作所の神野三和子社長=福島県川俣町山木屋で |
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