2016年2月16日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160216/ddl/k14/040/196000c
東日本大震災から間もなく5年。帰郷がかなわない東京電力福島第1原発事故による避難者たちは、当事者同士の支え合いの仕組みを、少しずつ育んでいる。【宇多川はるか】
横浜市保土ケ谷区で暮らす村上伴子(ともこ)さん(65)は、生まれも育ちも福島県大熊町。原発事故後、高齢の両親と共に避難を迫られ、勤め先のグループホームがあった同県南相馬市へ身を寄せた。異変があったのは震災から2年がたった頃。避難先での暮らしやグループホームでの仕事の疲れが蓄積したせいか、くも膜下出血で倒れた。
倒れたことをきっかけに横浜で暮らす次男が「一緒に住まないか」と持ちかけ、2013年3月、横浜へ生活の基盤を移した。
家族以外に知り合いもおらず、土地勘もない横浜での生活。リハビリで歩けるようにはなったが、寂しさは募った。そんな時、小畑まゆみさん(56)ら同じ福島県からの避難者たちが、村上さんの自宅を訪ねてきた。小畑さんらは避難者が集えるサロンを開くNPO「よこはま・七つ星」を設立し、高齢などの理由で外に出にくい避難者たちの訪問活動を続けている。
避難者らのサロンに出てきた村上伴子さん(左端)を囲む小畑まゆみさん(右から2人目)ら 「よこはま・七つ星」のメンバーたち=横浜市神奈川区で |
村上さんは話す。「交通機関も慣れず、倒れた後の体の不安もあり、知り合いもいない中で1人で出かけていけなかった。でも、同じ福島の人たちが来てくれて本当にうれしくて外に出るきっかけになりました」。その後、村上さんは七つ星の集まりに度々顔を出している。
小畑さんは「まだまだ1人では外出できず、孤立している避難者はいると思う。訪問活動に力を入れていきたいが、行政は基本的に避難者の個人情報を教えてくれない。避難者という同じ立場だから話せることもあるので、情報を共有していけたら」と話している。
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復興庁によると、県内の東日本大震災による避難者は3726人(1月時点)。県の集計では3047人が福島県からの避難者で、全体の約8割を占めている。
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