http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2026
国際環境疫学会(ISEE)は1月22日、日本政府に対して書簡を送り、福島県民健康調査の甲状腺検査について、「福島県民における甲状腺がんのリスク増加は、想定よりはるかに大きい」と懸念を表明し、信頼に足るリスクの推定を行うよう要請した。
また津田教授が論文の中で、甲状腺がんの早期発見・早期治療のために、福島県外をも含む体系的なスクリーニング(健診)の必要性を言及していることについてISEEは、こうしたスクリーニングの実施は、被ばくを受けた人々の利益となるだけでなく、科学的にも有意義であると指摘。さらに日本政府に対し、福島原発事故によるリスクに対する理解を深め、信頼度の高いリスク推定を行うよう要請した。
今回、日本政府に書簡を出したタイミングについてISEEは、OurPlanetTVの取材に対し、「昨年10月に津田教授が論文が公開されて以来、政策委員会で議論を重ねてきた。最終的には、昨年12月17日にのオンライン会議で決定した。」としている。
津田教授の論文については、福島県立医科大学の高橋秀人教授や長崎大学の高村昇教授らが反論文を提出しているが、津田教授は、再反論している。ISEEは、津田教授の論文で、「スクリーニング効果」が考えられない2回目の検査でも、想定を超える多発が起きている点を重視したものと見られる。
福島原発事故に伴う住民の健康診断などを担当している環境省環境保健局の放射線健康管理担当参事官室は、ISEEの書簡について、「課内で共有はさせていただいたた。他の学術団体の論文と同様に、参考にさせていただく」と述べ、ISEEに対して特段、返信はしないという。また「他の学術団体からも直接、書簡が届いているのか」との質問については、即答できないとした。
国際環境疫学会は世界最大の国際的な環境疫学者の組織で、たばこの発がん性やPM2.5など、環境暴露による身体への影響に関して、因果関係を解明する疫学分野で活躍する研究者が多数、所属していることで知られている。
http://www.iseepi.org/documents/Fukushimaletter.pdf
津田敏秀教授をはじめとする岡山大学の研究チームの論文
http://journals.lww.com/epidem/Abstract/publishahead/Thyroid_Cancer_Dete...
津田教授の論文に対するレター
名古屋大学鈴木貞夫教授
長崎大学高村昇教授
福島県立医大高橋秀人教授
マンチェスター大学Wakeford, Richard教授
ジョージタウン大学Jorgensen, Timothy J准教授
長崎大学柴田義貞教授
Körblein, Alfred教授
津田敏秀博士らの論文の方法の誤りを指摘したLetterが「Epidemiology」誌電子版に掲載されました(福島県立医大県民健康管理センター見解)
http://fukushima-mimamori.jp/news/2016/02/000248.html
上記レターに対する津田教授のコメント
国際環境疫学会・会長から日本政府に対する書簡(仮訳)
環境省総合環境政策局環境保健部長 北島智子殿
福島県保健福祉部県民健康調査課課長 小林弘幸殿
環境大臣 丸川珠代殿
環境疫学者の組織として世界最大の専門家集団である「国際環境疫学学会(ISEE)」は、環境疫学者を代表し、福島県民における甲状腺がんの発症リスクが、想定よりもはるかに大きいと示した最近の科学的証拠について憂慮しています。
最近発表された研究では、福島県民における甲状腺がんの発生リスクが、日本の他の地域と比較して12倍高いと示されています。これは、公開された論文へのコメンタリーでも指摘されていたように、例外的に高いリスクです。この研究は、福島原子力発電所事故に伴う地域住民に対する長期的な影響について追跡調査するには、適切なデータや研究が欠如していることを懸念して、実施されているものです。
2015年9月にサンパウロで開催されたISEE年次総会の特別シンポジウムにおいて、この論文に先駆けた研究結果が発表されました。シンポジウムにおける議論において、学会メンバーは、福島原発事故の健康影響の続報に関して大きな科学的関心を示しました。
この研究は、事故によって影響を受けた集団に対し、甲状腺がんの早期発見・早期治療を可能にするための、継続的かつ体系的なスクリーニングの必要性を示しています。そのような前向き研究は、影響を受けた集団への直接的な利益に加え、電離放射線のリスクに関する国際的知見を構築するために重要な価値があります。
私たちは、国民の利益を守る利害関係者としての日本政府に対し、福島県民の健康を科学的に記録して追跡するための一連の方策を構築し、2011年に起きた事故によるリスクに対する理解を深め、より信頼度の高いリスク推定をするよう要請します。
事故後に環境中に残留している可能性のある放射線への集団の被ばくを詳細に追跡することは、科学的および予防的な理由で必要であり続けると考えています。そのような研究は、原子力事故の健康影響に関する世界的な知識体系にへの貴重な貢献となり、また影響を受けた集団におけるリスク低減策も提供することでしょう。
ISEEは、学会メンバーの専門知識を活用することにより、必要な活動を支援・支持することができます。日本政府が、ISEEが独立した国際専門家組織として関与することを構想できるのか、そしてどのような関与を構想されているのかについて、私たちは関心を寄せています。この手紙に関する見解と、またこの重要な問題に関する将来的な計画について、日本政府からご返信いただけると幸いです。
1月22日
フランシーヌ・ラディン博士 ISEE会長
ジョージタウン大学Jorgensen, Timothy J准教授
長崎大学柴田義貞教授
Körblein, Alfred教授
津田敏秀博士らの論文の方法の誤りを指摘したLetterが「Epidemiology」誌電子版に掲載されました(福島県立医大県民健康管理センター見解)
http://fukushima-mimamori.jp/news/2016/02/000248.html
上記レターに対する津田教授のコメント
国際環境疫学会・会長から日本政府に対する書簡(仮訳)
環境省総合環境政策局環境保健部長 北島智子殿
福島県保健福祉部県民健康調査課課長 小林弘幸殿
環境大臣 丸川珠代殿
環境疫学者の組織として世界最大の専門家集団である「国際環境疫学学会(ISEE)」は、環境疫学者を代表し、福島県民における甲状腺がんの発症リスクが、想定よりもはるかに大きいと示した最近の科学的証拠について憂慮しています。
最近発表された研究では、福島県民における甲状腺がんの発生リスクが、日本の他の地域と比較して12倍高いと示されています。これは、公開された論文へのコメンタリーでも指摘されていたように、例外的に高いリスクです。この研究は、福島原子力発電所事故に伴う地域住民に対する長期的な影響について追跡調査するには、適切なデータや研究が欠如していることを懸念して、実施されているものです。
2015年9月にサンパウロで開催されたISEE年次総会の特別シンポジウムにおいて、この論文に先駆けた研究結果が発表されました。シンポジウムにおける議論において、学会メンバーは、福島原発事故の健康影響の続報に関して大きな科学的関心を示しました。
この研究は、事故によって影響を受けた集団に対し、甲状腺がんの早期発見・早期治療を可能にするための、継続的かつ体系的なスクリーニングの必要性を示しています。そのような前向き研究は、影響を受けた集団への直接的な利益に加え、電離放射線のリスクに関する国際的知見を構築するために重要な価値があります。
私たちは、国民の利益を守る利害関係者としての日本政府に対し、福島県民の健康を科学的に記録して追跡するための一連の方策を構築し、2011年に起きた事故によるリスクに対する理解を深め、より信頼度の高いリスク推定をするよう要請します。
事故後に環境中に残留している可能性のある放射線への集団の被ばくを詳細に追跡することは、科学的および予防的な理由で必要であり続けると考えています。そのような研究は、原子力事故の健康影響に関する世界的な知識体系にへの貴重な貢献となり、また影響を受けた集団におけるリスク低減策も提供することでしょう。
ISEEは、学会メンバーの専門知識を活用することにより、必要な活動を支援・支持することができます。日本政府が、ISEEが独立した国際専門家組織として関与することを構想できるのか、そしてどのような関与を構想されているのかについて、私たちは関心を寄せています。この手紙に関する見解と、またこの重要な問題に関する将来的な計画について、日本政府からご返信いただけると幸いです。
1月22日
フランシーヌ・ラディン博士 ISEE会長
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