2015年8月7日 朝日新聞
http://www.asahi.com/sp/articles/ASH8733Q3H87ULFA002.html
政府の原子力災害対策本部は7日、東京電力福島第一原発事故でほぼ全町民が避難している福島県楢葉町への避難指示について、来月5日に解除することを正式に決めた。避難指示の解除は福島県田村市都路(みやこじ)地区、川内(かわうち)村東部に続き3例目。役場機能ごと避難している7町村では初めてで、帰還が大規模に進む可能性がある。
政府は当初、8月のお盆前の避難指示の解除を予定していたが、「なぜ急ぐのか」との町民らの反発を踏まえて遅らせていた。
社説(8/7):楢葉の避難解除/地域再生のモデルケースに
2015年8月7日 河北新報
http://sp.kahoku.co.jp/editorial/20150807_02.html
古里で安心して暮らせる日を待ちわびて、避難生活を耐え忍んできた。平穏な日々を奪われてから4年4カ月余り。ようやく帰還できる日が決まった。
東京電力福島第1原発事故で全町避難している福島県楢葉町の避難指示が9月5日に解除される。
解除は田村市都路地区東部、川内村東部に続き3例目。全住民が避難した自治体では初めてとなる。
制約を受けずに自宅でくつろぎ、寝泊まりする。原発事故前は気にも掛けなかった日常のありがたみに浸る。離郷を強いられた住民にとって、住み慣れた家に戻ることこそ、この上ない喜びであろう。
人が住んでいなかった町は荒廃している。まずは生活できる環境をつくり直さなければならない。日常生活を取り戻す前に、課題が山積している。解除を決めた国は住民の懸念を直視し、古里再興を目指して多方面から支援の手だてを講じる責務を負う。
解除を決めるに際しベースになったのが、6月に改訂された福島の復興指針だ。避難指示について「生命・身体に危険が及ぶ状況が解消されれば、速やかに解除」との方針を示した。解除の要件には(1)年間の積算放射線量が20ミリシーベルト以下(2)生活インフラや医療、介護などがおおむね復旧(3)自治体や住民との十分な協議-を挙げている。
国は住民との懇談会で「楢葉は生命・身体の危険が生じないレベルにある。原発事故前と同じ姿ではないが、安全は確保されている」と強調した。
果たして、そうだろうか。福島第1原発は高濃度汚染水の流出が頻発するなど、廃炉作業が安定していない。病院、介護、住宅、買い物。どれも不便を感じることのない状態にはほど遠いのが実情だ。
国は当初、お盆前の8月10日解除を検討したが、「時期尚早」と反対した住民と、先送りを求めた議会に配慮し、方針を変更した。1カ月程度の先送りで、状況がどの程度改善するのか。住民が「生活環境を整えてから解除するのが筋だ」と訴えるのは、もっともだろう。
楢葉町の人口約7400のうち、帰還に向けて4月6日に始まった準備宿泊には1割しか登録していない。
帰町を促すためには、生活基盤の再生を加速させなければならない。政府は町外の医療機関への無料バスの運行や商業施設の拡充と宅配などを始めるという。小手先の対策を小出しに繰り出すのでは、おぼつかない。安心を実感できるよう、早期に総合的な支援策を実行に移すことを求めたい。
楢葉町の取り組みは試金石と位置付けられよう。対象が300人前後だった田村市や川内村とは規模が大きく違う。浪江町や富岡町、飯舘村など、同様に全域が避難区域となっている自治体は、先行例として、楢葉町の動向を注視するだろう。
解除はコミュニティー再生のスタートラインに立ったにすぎない。国と地元は一丸となって地域の自立を目指し、福島復興のモデルづくりにまい進してほしい。
0 件のコメント:
コメントを投稿