2016年4月26日 毎日新聞
東京電力福島第1原発事故を受け、福島県富岡町から群馬県に集団避難している知的障害者施設「光洋愛成園」の利用者と職員の約100人が新施設の完成に伴い、27日に5年ぶりに福島県に戻る。福島県によると、県外に集団避難した福祉施設13施設で最後の帰還。将来的な職員の確保など課題はあるが、利用者らは期待に胸を膨らませている。
新施設の写真を前に笑顔を見せる利用者たち =群馬県高崎市寺尾町の「のぞみの園」で2016年4月19日、山本有紀撮影 |
あす福島に 新施設は福祉の核に
光洋愛成園は社会福祉法人「友愛会」が運営。事故当時、原発の南約10キロにあり、利用者と職員合わせ約150人いたが、約1カ月の避難所生活を経て約100人が群馬県高崎市の国立知的障害者施設「のぞみの園」に移った。福島から約300キロ離れた見知らぬ土地で、「いつ帰るの?」と毎日のように不安を口にしていたという。
施設があった場所は現在も「居住制限区域」に指定されているため、福島県広野町に新築された。昨年2月の着工以来「のぞみの園」の壁には建設中の写真が張られ、避難者の気持ちをなだめてきた。
利用者の坂本由理子さん(36)は「古里に帰りたい。南相馬市で暮らしている祖母と姉も楽しみにしてくれている」と話す。保護者代表の桑原正敏さん(72)=福島市=は長女(45)に会うために毎月、3時間以上かけて高崎に通っていた。今月21日にあった新施設の落成式に出席し、「これで頻繁に会いに行ける」と喜んだ。
再建事業費は20億円超。国や県の補償金、東電の賠償金だけでは足りず、独立行政法人「福祉医療機構」から数億円借り入れた。返済に20年かかる。職員は、放射能への不安などからこれまでに3分の1が退職した。再出発の道を選んだ職員は39人で、国が定める最低基準の36人をわずかに超える程度だ。
友愛会の寺島利文事務局長の心配は尽きないが、「帰還はゴールではなく通過点。広野町を発展させる上で、福祉の一つの核になりたい」と力を込める。【山本有紀】
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