2016/04/25

原子力防災対策費 原発事故前の8倍に 不備指摘も

2016年4月25日 NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160425/k10010497911000.html

5年前の原発事故を受けて、全国の自治体の防災対策を支援する国の年間の予算額の平均が事故前のおよそ8倍に増えていることが、会計検査院の調べで分かりました。緊急用の機材の活用方法が定められていないなどの不備が指摘されたケースもあり、会計検査院は改善を求めています。

福島第一原発の事故では、避難の範囲が当時の想定を大幅に上回ったことなどから、住民の被ばくを防ぐ対応が混乱し緊急時に備えた避難計画や施設の整備などの準備不足が浮き彫りになりました。このため原発の周辺10キロ圏内だった対策の対象範囲を30キロ圏内に広げるなど、国の指針が見直され、全国の自治体が進める対策を国は交付金や補助金を出して支援しています。

これについて会計検査院が調べたところ、事故後の平成24年度から4年間の予算の合計は1008億円で、年間の平均は250億円余りと、年間30億円程度だった事故前のおよそ8倍に増えていることが分かりました。会計検査院は、対策の対象範囲が広がったことが主な原因だとしています。

また予算の使われ方を調べたところ、配備された放射線量を測定する機材を緊急時に誰が使うか定められていなかったり、高齢者などがとどまる「一時退避施設」で、屋内退避の手順を示した避難計画が作られていなかったりといった不備が指摘されたケースもあり、会計検査院は改善を求めています。 



放射線測定器など活用態勢不十分な例も

国の支援を受けて自治体が購入し、緊急時に使うとしていた放射線測定器について会計検査院が調べたところ、誰が使うかなど具体的な対応が決まっていないものが90%以上に上り、会計検査院は改善を求めています。

それによりますと、配備した道や県が緊急時に使うとしている線量計やサーベイメータなどの放射線測定器合わせて3743台のうち、93%に当たる3508台は、誰が測定し、測定した値をどう活用するか決まっていなかったということです。自治体別で見ると、具体的な活用方法が決まっていなかったのは、茨城県で1232台、石川県で592台、福井県で525台などとなっています。

会計検査院は、放射線測定器を緊急時に十分に活用できる態勢が整っているとは認められないと指摘し、誰が使い、どう活用するのか具体的な検討を行うよう求めています。

最も台数が多かった茨城県の原子力安全対策課の綿引恵一課長補佐は「事前に活用方法を詰めておくべきだった。測定器を管理する市町村に対し今後、徹底させたい」と話しています。また事業を担当する内閣府は「会計検査院の指摘に従い、自治体を指導したい」と話しています。


一時退避施設の整備でも不備指摘

会計検査院は、原発事故の際に無理に避難するとかえって病気や体調が悪化するおそれのある人たちが数日間、屋内退避するための「一時退避施設」の整備状況についても調べました。

それによりますと、国の補助金を使って、去年末の時点で全国の原発のおおむね半径30キロ圏内にある特別養護老人ホームや病院、それに学校や公民館など合わせて140か所が一時退避施設として整備されています。これらの施設は、非常用電源の設置や耐震化のほか放射性物質の流入を防ぐため、窓を二重にして密閉度を高めたり、フィルターつきの換気設備を設置したりするなどの工事が必要で、事業費は3年間で246億円に上っています。

このうち全体の76%に当たる106の施設では、水や食料の備蓄が屋内退避の日数分を下回っていて、今年度中に足りない分を増やす予定だということです。また、30%に当たる42施設では原発事故を想定した訓練の際、放射性物質の流入を防ぐ換気設備を実際に使って操作のしかたや手順を確認しておらず、島根県で12施設、青森県で9施設、新潟県と石川県でいずれも4施設などとなっています。そのうえで、島根県や新潟県などの12施設は「今後もそうした訓練を行う時期は決まってない」と回答したということです。

さらにふだんから入院患者や入所者がいる80施設のうち半数以上の43施設では、判断の基準や放射線防護設備が整った場所への移動など、屋内退避の手順を記載した避難計画が作られていませんでした。内訳は青森県で14施設、茨城県と島根県でいずれも8施設、新潟県で4施設などとなっています。

検査院の指摘を受け、内閣府は「訓練や避難計画の作成が適切に行われるよう、道府県を通じて施設側に働きかけたい」と話しています。


専門家「国費はきちんと透明化を」
電力の問題に詳しい東京大学社会科学研究所の松村敏弘教授は、今回の検査院の指摘について「原発の安全対策に使われた国費の流れが明らかにされることは重要だ。多額の国費を投入する以上、それに見合うものだったか、きちんと透明化する必要がある。また電力会社が負担すべき費用がないかも国民全体できちんと議論しなければならない」と指摘しています。



放射線測定器、8割使われず 国支援で購入

2016年4月25日 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG25HEQ_V20C16A4CR8000/

原子力発電所が立地、隣接する18道府県が国からの財政支援で購入した放射線測定器の約8割が、本来の目的である放射線に関する知識の普及啓発に活用されていなかったことが25日、会計検査院の調査で分かった。

2013年度に購入された計8672台(8億9537万円)について調べた。震災で甚大な被害を受けるなどした福島や宮城など3県は調査の対象外とした。

購入にあたって自治体は公共施設に置き、住民説明会などで知識の普及啓発に活用することなどを目的に交付金を受け取っていた。しかし約8割の6729台が15年9月末までに一度も普及活動に使われていなかった。

約560台購入し、全く活用していなかった北海道は「各市町村の説明会では避難計画や避難行動についてが中心で、測定器の活用まで至らなかった」(原子力安全対策課)という。茨城県は「今後は講座や研修などを実施して活用したい」としている。

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