http://mainichi.jp/articles/20160415/ddl/k14/040/222000c
被ばくの恐怖と葛藤抱え出産した海南監督
東日本大震災による東京電力福島第1原発事故を取材したドキュメンタリー映画監督の海南(かな)友子さん(45)が、被ばくの恐怖と葛藤を抱えながら出産するまでの自分にカメラを向けた映画「抱く[HUG](ハグ)」が、16日から横浜市中区の「シネマ・ジャック&ベティ」で上映される。原発事故の被害を改めて突きつけ、子どもたちの未来のためにどう生きるべきかを問いかけている。【石塚淳子】
海南監督は原発事故から1カ月後の2011年4月12日、取材で原発から4キロの場所に入った。1〜2年かけて、原発事故の被害に遭った人々を描く作品を作るつもりだった。だが、その直後に妊娠がわかる。不妊治療の末、子どもを持つことを諦めていた40歳の時だ。
自分自身が「放射能におびえる母親の一人」になった。住んでいた東京都内でも、水道水や母乳から放射性物質が検出されたことから、体内被ばくの不安に襲われた。福島で出会った母親たちの苦しみを、自分のものとして感じた。子供への健康被害を心配する多くの親たちに代わって、自らにカメラを向ける決心をする。
京都へ移住して出産に備えたが、つわりの時期は終わっているのに激しい吐き気や心臓の痛みに襲われた。放射能の影響への不安が頭から離れなかったが、胎児に障害があるかどうかは調べなかった。「多くの命が失われた年に私を選んで来てくれたのだから、どんな障害があっても受け入れよう」と思ったからだ。「あなたを全力で守るから、どうか無事に生まれてきて」と祈り、11年12月28日、無事に男の子を出産した。
海南監督はNHKのディレクターを経て独立。戦争や環境問題をテーマにドキュメンタリーを製作してきた。原発事故後、自分の誕生日と福島第1原発1号機の営業運転開始日が同じだと知り、原発に支えられて生きてきたと実感したという。
海南監督は「原発事故から5年がたったが、まだ5年であり、問題は続いていることを忘れないでほしい。映画が、あの日の恐怖や苦しみを分かち合い、立ち止まってこの先どうすべきかを考えるきっかけになれば」と話している。
22日まで。上映は午前11時35分から、69分。通常料金は一般1800円、学生1500円、高校生以下・シニア1000円。
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