2016/04/24

人影なく、あるじは動物=チェルノブイリ原発の町-26日で事故30年・ウクライナ

2016年4月24日 時事通信
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016042400063&g=int 

史上最悪規模の放射能汚染をもたらした1986年4月の旧ソ連チェルノブイリ原発事故から26日で30年が経過する。隣接するウクライナ北部の原発城下町プリピャチでは、当時の住民約5万人が強制避難させられ、高層住宅街は廃虚と化した。町からは人間の営みは消え、あるじは野生動物に取って代わったようだ。

当局の特別許可を検問所で提示し、市街地に入る。「メインストリートだった」(元住民)という道路は、長い時間を経て草木が生い茂り、狭い林道のようになっている。抜けると、文化会館やホテルなどが囲う中央広場が広がった。

小さな動物が近づいてきた。町を案内する元住民が、なじみのキツネの名前を「セミョン」と親しみを込めて呼ぶ。3年前から姿を見せるようになった雄で、関係者らの間では人気者だ。好物は肉やソーセージ、魚など。他にもウサギ、シカ、オオカミ、イノシシ、ヤマネコ、ワシなど野生動物が町で観察されるという。

原発から約2キロのプリピャチは、原発作業員らのために森を切り開いて70年につくられた比較的新しい町だ。元住民は「事故前、町で野生動物など見掛けなかった。今は野生動物があるじで、人間は訪問客にすぎない」と話した。

プリピャチを含め、原発の半径30キロの立ち入り制限区域から強制避難させられた住民は10万人以上。大半は首都キエフに移住した。自主的な帰郷者が90年代に約1000人に上ったが、高齢者が多く、現在は約80人に減少。元住民が望郷の念を抱く中、30年が過ぎる。

ウクライナ北部のチェルノブイリ原発に隣接するプリピャチで姿を見せる野生のキツネ。
元住民が「セミョン」と名付けた=2月29日


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