2016/05/23

福島の農林水産物/風評定着を断じて許すな

(福島の日本酒が全国一になったにも関わらず売れないという報道を見ました。風評被害だというのですが、日本酒の場合は確かに、厳しく測定しても検出されないと聞いていますから、日本酒の安全性についての疑問は風評と言えます。しかし、多くは100ベクレルの基準以下なら安全と押し通そうとする姿勢が鮮明で、消費者の安全を求める基準とは合致していないのです。それを「風評」と批判するばかりでは何も解決しません。子ども全国ネット)

2016年5月23日 河北新報
http://www.kahoku.co.jp/editorial/20160523_01.html

福島県産品の信頼性をいかに高めていくか。東京電力福島第1原発事故の発生から6年目に入り、その重要性は一段と増している。

放射線モニタリング検査の継続などにより、流通する農林水産物の安全性は着実に高まってきた。

県によると、2015年度の検査で放射性セシウムの基準値(食品は1キログラム当たり100ベクレル、原乳は50ベクレル)を超えたのは18件。検査した2万3855件の0.1%に満たなかった。基準が暫定の500ベクレルだった11年度の3.4%、現行基準となった12年度の1.8%から大きく下がった。

品目別に見ると、肉類と鶏卵は5年連続、原乳は4年連続、野菜・果実は3年連続で、いずれも基準値超えがなかった。全袋検査を続けているコメは2件あったものの、原発事故後初めて自家用に作付けした前年産米だった。

生産現場は汚染された農林水産物を流通させないようにするとともに、汚染を防ぐ努力を重ねてきた。

田畑では表土の剥ぎ取りや天地返しを実施。果樹は樹皮を削ったり洗い流すなどしてきた。作物が放射性物質を吸収するのを抑える効果があるとされるカリウムの十分な散布といった工夫もしている。

こうした努力が検出ゼロにつながり、一見すると、風評被害も払拭(ふっしょく)されつつあるように思える。

福島県内では「県内産は扱いを拡大しており、販売量は震災前より増えた」(地元スーパー)との指摘がある。

県外も同様だ。仙台市中央卸売市場が15年度に扱った福島県産野菜は2344トン。10年度を4.8%下回ったが、原発事故直後からは大きく回復した。果物は2103トンで10年度を4.5%上回った。

確かに流通量は回復したが、かえって風評被害が見えにくくなった恐れはないか。

県によると、取引価格を全国平均と比較すると、コメは10年が98.4%だったのに対し、15年は92.2%に落ち込んでいる。10年に88.2%だったモモは11年に43.8%まで低下。その後は上昇傾向にあるものの、15年は74.4%までしか戻っていない。

全農福島県本部の説明では、県産米は原発事故後、業務用として扱われるケースが増えた。業務用は品薄傾向にあるため売れ行きは好調だが、取引価格は事故前水準を回復できずにいるという。

消費者庁が2月に実施した消費者の意識調査では、福島県産の食品購入を「ためらう」との回答が15.7%に上った。一方で放射性物質検査が行われていることは「知らない」が36.7%に達し、過去7回の調査で最高だった。

関心が薄れる中で漠然とした不安感だけが残る。それが福島県産品の評価回復を遅らせているのではないか。

県は今後も流通業界との商談会やイベントなどで県産品の売り込みに力を入れる方針だが、安全性の確保と保証に向けた努力を重ねていることを今まで以上に消費者に訴えることが求められる。

関心の薄れは取引価格の安値安定という事態を招きかねない。「風評の定着」は絶対に防がなければならない。

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