2016/05/30

福島/教育の維持に苦心、薄れる帰還意識 村内学校再開目指す飯舘村

2016年05月30日 福島民友
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20160530-079909.php

2018(平成30)年4月に村内での学校再開を目指す飯舘村では今春、幼稚園や小中学校などを集約する飯舘中の周辺で大規模な除染が始まった。村は子どもの帰還を促そうと徹底した除染に加え、特色ある教育の展開に向けて余念がない。一方、長期避難により多くの子育て世帯は避難先に生活拠点を構え、村の教育から距離を置く姿も浮かぶ。

◆◇◇1ミリシーベルト以下に
「1ミリシーベルト以下に落とすと約束したい」。昨年11月の保護者説明会で、菅野典雄村長は学校施設の徹底除染を約束した。放射線量に対する不安の声に応えるためだ。村は環境省に対し、毎時0.23マイクロシーベルト以下に下げるよう要望した。

村の除染担当者は「線量を下げるため、やれることはやる」と意気込む。全域が避難区域のため、除染の主体となるのは環境省だが、村は校舎近くの木を伐採するなど除染に関わる作業にも乗り出した。大規模な除染は8月まで続く予定だ。

◇◆◇子どもの数
現在、同村の小学校は川俣町、中学校は福島市飯野町の仮の校舎で授業を行っている。原発事故後、6割の子どもが村の教育から離れた。村によると、約400人が避難先の学校に移った。飯舘中PTA会長の星貴弘さん(37)は「避難先に生活拠点が移った。よほどの理由がないと、村には戻らないだろう」と諦め顔だ。

村内で学校を再開する方針を受けて実施された村教委のアンケートで、保護者を通して村内の学校に通わせる意向を示したのは65人。このうち村内から通学すると答えた人は4人のみ。避難先から仮の校舎に通う子どもは233人いるが、村内で学校が再開した場合、放射線量への不安などからさらに村の学校に通う子どもが減る見通しだ。

◇◇◆独自の教育
今春、飯舘中に入学したのは22人で、村の小学校を卒業した43人のほぼ半数だ。星さんは「村内での学校再開を意識し、避難先の学校に転校した子もいる」と内情を打ち明ける。理由は放射線や今後の教育環境への不安などさまざまだ。

学校再開に力を入れる理由について、菅野村長は「学校のないところに未来はない」と力説する。村の復興には人材が必要。子どもたちの重荷となってはいけないが、村は特色ある教育に磨きを掛け、村への帰還を促したい考えだ。

村は義務教育9年間での一貫した学習指導や避難先からスクールバスの運行を計画している。予算は50億円規模。村の規模からすれば過重ともいえる負担だが、菅野村長は実現へ意欲を燃やす。

「5年が過ぎ、"福島市の子"になった感覚の子もいる」。星さんは村の将来を憂う。「若い人が村に戻るメリットを打ち出すことが大事。子どもを増やすためには営農再開に力を入れたり、雇用の場をつくることも必要」と、村づくりと人づくりが連動していることを感じている。学校再開は村の行く末に直結する。

除染が進む飯舘中周辺
村内での学校再開に向け準備が進んでいる=飯舘村 

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