2016/05/23

茨城/山林の放射性セシウム 新技術で低地へ移動を抑制 茨城大などの研究グループ

2016年5月23日 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201605/CK2016052302000173.html

粘土質や特殊な溶液を使い、山林の放射性セシウムの移動を抑える新技術を開発した、と茨城大学などの研究グループが発表した。東京電力福島第一原発事故で汚染された山林近くの住宅地や農地では、除染後に山林から放射性物質が雨などで流れ込む恐れがあり、課題となっている。「この技術を生かせば、効率良い山林の除染も可能になり、福島県などの里山再生が期待できる」としている。 (宮本隆康)

実験場の説明をする茨城大の熊沢紀之准教授=日立市で 

茨城大工学部の熊沢紀之准教授の研究室、ゼネコンの熊谷組、日本原子力開発機構などが共同研究した。

発表によると、放射性セシウムが腐葉土から水に溶け、植物に吸収されるのを抑えるため、セシウムを吸着する粘土の一種「ベントナイト」の粉末を山林にまく。

セシウムを吸着したベントナイトの粒子は、雨で流れる可能性がある。電荷がマイナスの特性があるため、プラスの電荷の特殊な溶液を、山林の斜面に散布。土に染み込んだ溶液が、ベントナイトを引きつけ、その場にとどめる。

セシウムの一部が、ベントナイトに吸着されないことも想定。水に溶ければプラスの電荷になることに着目し、さらに低い位置にマイナス電荷の溶液もまき、生活圏へ流れ込むことを抑える。

研究グループは二〇一五年、福島県飯舘村の山林で実証実験を実施した。斜面で上から一メートル、二・五メートル、四メートルの三地点で、三カ月後のセシウム濃度を計測。何もしない状態では二・五メートル地点が最大濃度だったが、新技術を使えば一メートル地点が最大濃度になり、セシウムの移動を抑制することが確認された。

熊沢准教授は「表土を取り除く除染は、山林では手間とコスト、作業員の被ばくを考えれば困難。この技術は、原料が無害でコストも低く、雨を使って放射性セシウムを集積させ、効率良く除染することもできる」と話している。

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