2015/08/01

【韓国からの来県】青少年交流に期待

2015年8月1日 福島民報
http://www.minpo.jp/news/detail/2015080124420

来日中の韓国の中学生らが31日、福島市で催された福島わらじまつりに参加した。日本の夏祭りを堪能し、貴重な思い出を心に刻んだだろう。8月7日まで滞在する予定で、日本、福島の魅力を十分に体感してもらいたい。

来県したのは、全州(チョンジュ)市の中学・高校生、大学生、20代の若者ら総勢166人だ。福島市に拠点を置くNPO法人ふくかんねっとが青少年交流事業として立案した。日韓国交正常化50周年を記念し、外務省から委託を受けた公益財団法人日韓文化交流基金の助成を受け実現した。

すんなり進んだわけではない。ふくかんねっとによると、来日直前、韓国の環境団体などから企画を疑問視する声が上がり、地元メディアにも取り上げられたという。放射能の危険が理由だった。帰還困難区域や避難生活者を除き、福島県民のほとんどがほぼ平常な生活を送っていることを考えると、問題視する発想に驚きを禁じ得ない。もちろん、懸念が分からないわけではない。しかし、それが大震災・原発事故から4年余が過ぎた今の姿なのだ。来県した青少年、送り出した保護者の思いに敬意を表したい。

大半が「日本の生活、文化を知りたい」との意志から参加したと聞く。日本の若者にも関心はあるはずだ。ボランティアスタッフを募ったところ、県内の高校生約20人が申し出た。同世代の交流は将来、大きな実りを結ぶ。県民はおもてなしの心を持ち、温かく見守ることが大切だ。

1日は福島市の庭坂小で交流する。わらじまつりとは違った地域ならではの夏祭りを楽しめるだろう。2日には、県文化センターを会場に「食と音楽の交流会」が開かれる。一流アーティストによるステージのほか、日韓双方の料理が用意される。駐仙台韓国総領事も出席する予定だ。

県当局にとっては、本県の実情を正しく発信する絶好のチャンスになる。今年上半期、韓国から訪日した人は181万人強に達し、中国に次ぎ二番目に多い。首都圏でもよく見掛ける。だが、福島まで足を延ばさない現状が続く。この機会を逃さず、知恵を凝らし福島の安全性を訴えるべきだ。

残念ながら日韓の間には、幾つかの障壁が横たわる。ふくかんねっとの幹部は「仲間意識」「未来志向」を友好の理念と信じ、活動を続ける。課題を乗り越え、多くの企画を立てた熱意にも頭が下がる。本県を舞台に、民が発案した交流が成果を生むことを期待してやまない。(荒木 英幸)

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