2016年4月12日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160412/ddl/k07/040/335000c
原発事故で全村避難が続く葛尾村の避難指示解除(帰還困難区域を除く)について、政府の原子力災害現地対策本部と村は10日、田村市内で住民説明会を開き、6月12日に解除する方針を伝えた。政府と村が、生活インフラの整備が進んだとして帰還に理解を求める一方、被ばくに不安を抱える住民からは、村の大半を占める森林の除染範囲を拡大するよう求める意見が相次いだ。【土江洋範】
現地対策本部は今月5日、村側に「6月12日」の解除方針を伝えている。松本允秀(まさひで)村長は容認の構えで、村民の意見を集約するため、現地対策本部と合同で住民説明会を開いた。午前と午後の2回あり、村の人口1470人(1日現在)の2割に当たる約300人が参加した。質疑応答の中で約20人が帰還への懸念を訴え、村内の空間放射線量についての不安の声が大半を占めた。
葛尾村の住民説明会の冒頭、あいさつする 政府の原子力災害現地対策本部の後藤収・副本部長(中央)=田村市で |
国は、宅地▽農地▽道路▽森林−−を対象に除染を進めている。だが日常的に人が立ち入らない場所が多い森林については、生活圏(宅地、農地など)から20メートルの範囲に除染の対象を限定している。
原発事故前、茨城県から移住するための家を新築した谷地俊一郎さん(72)は「村の大半を占める山林に住宅が点在している。一歩林に入れば線量が高い。20メートルの除染だけで安全と言えるのか」と批判。帰還して米作りの再開を望む松本淳一さん(60)も「田畑が山の中にあり、沢水も含めて山林の線量が気になる」と指摘した。
これに対し、国の担当者は「20メートルより奥の除染を全くやらないつもりはない。日常的に人が立ち入ったり、作業をしたりする場所については、個別に相談したい」と答えた。
一方、これまで村民の懸念が強かった生活インフラの整備については、村が当面、住民を隣接する田村市の医療施設や商店に車で送迎し、商工会も食料・日用品を宅配すると説明。一部から救急医療体制への不安の声が上がったものの、大きな異論は出なかった。
また、居住制限区域の住民らからは、放射線量が高いため、避難指示の解除を遅らせるよう求める意見も出たものの、松本村長は「避難が長引くことで精神的なダメージを受ける人が数多くいる。(除染廃棄物が入った)フレコンバッグが積まれて村内は大変な状況にあり、帰れない人に『無理に帰ってください』と言っているわけではない」と応じた。
現地対策本部の後藤収・副本部長は「明確に安心安全の線引きができないのが、放射能の難しいところだ。避難指示解除の議論が進んでも、追加除染など一つ一つ課題の解決に向けた取り組みを進めたい」と話した。
現地対策本部は、今後、村や県と協議して解除時期を詰める。
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内堀雅雄知事は11日の定例記者会見で、国が葛尾村の避難指示を6月12日に解除する方針を示したことについて、「一人でも多くの方が、古里に帰りたいと思えるような生活環境の整備を、国や村と一体となって進めたい」と述べた。
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