2016/05/11

里山再生へ新除染方法 茨城大など開発

2016年5月11日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/local/ibaraki/news/20160510-OYTNT50284.html 

◆環境への影響少なく
茨城大などの研究グループは10日、液体を使って粘土を固める技術を応用し、新たな除染方法を開発したと発表した。環境への影響が少ない物質が使われており、除染が難しい山間部で活用され、里山再生につながることが期待されている。

研究に加わったのは、日本原子力研究開発機構と、準大手ゼネコン「熊谷組」。新たな除染方法では、土木工事の止水材に使われる粘土「ベントナイト」と、リンスの原料などを含む「ポリイオンコンプレックス」の水溶液が使われる。

山の斜面の上部にまいた粘土に土壌汚染の原因となる放射性セシウムを吸着させ、雨などで流れ落ちてくる粘土を、斜面の下部にまいた液体でセシウムごと固めるという手法だ。電荷がマイナスの粘土と、プラスのポリイオンコンプレックスを混ぜると固まる性質を利用した。

同大によると、1986年のチェルノブイリ原子力発電所の事故後の汚染拡大防止でも使われた。セシウムの飛散量が30分の1となるなどの効果が出たが、液体の塩分濃度が高く、植物が育ちにくくなるなどの影響が出たという。

同大は液体の成分や比率、濃度を変えながら実験を繰り返し、環境に影響の少ない液体を研究。2014年12月からキャンパス内の自然林で実験を始め、15年9月からは放射線量が高い福島県飯舘村でも効果を検証した。

その結果、斜面の下部では、1キロ・グラム当たり10万ベクレルの高い放射性物質を含む土壌を通過した水から放射性物質が検出されず、植物の発芽率にも影響がなかったという。同大は昨年12月までに粘土を固める液体と、除染方法の特許を申請した。

研究の中心となった同大工学部(生体分子機能工学)の熊沢紀之准教授(60)は「斜面の下部で表土を剥がす今までの方法だけでは、上部で大雨が降れば除染前に戻ってしまう。新たな技術を使えば、少しずつでも里山が再生される可能性がある」と、実用化を目指している。

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