2016/05/14

南相馬避難指示、解除目標で新提示 現地対策本部、7月1日の方針/福島


2016年5月14日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160514/ddl/k07/040/193000c  

福島第1原発事故による避難指示を今春解除する目標を掲げた県内4市町村のうち、最も除染が遅れていた南相馬市の避難指示が7月に解除される情勢となっ た。13日に政府の原子力災害現地対策本部が7月1日に解除する新たな目標を提示。桜井勝延市長は早期解除への反対論に配慮し、15日からの住民説明会 後、国と最終協議する考えだ。ただ、7月23日に始まる伝統行事「相馬野馬追」の前に解除する意向は変えておらず、遅くても7月中旬に解除される見通し だ。

現地対策本部の後藤収副本部長は13日の南相馬市議会で「環境省による除染や市の確認作業が進んでおり、解除に向けた環境は整ってきた」と説明。解除の 時期を、配布資料で「7月上中旬をめど」と記載する一方、口頭では「7月1日が一つの目標になる」と具体的な日付に言及した。

日程にあえて幅を持たせたのは、農地や道路など生活圏以外の除染が春以降も続き、早期解除に強い反対論があるためだ。矢面に立つ桜井市長は、住民の頭越 しに解除日が既成事実として独り歩きし、批判が高まることは避けたい意向だ。政府が市の事情を察して先延ばしする可能性をにじませたとも取れる。

13日の市議会では、複数の議員から「(除染に)未同意世帯の除染が終わっておらず、除染以外の作業で出たごみ袋も複数箇所で放置されたままだ」「震災から6年で全損扱いになる不動産などの賠償が、半年程度早く打ち切られるのは不合理」などの意見が出た。

だが、反対意見を表明するのは避難区域選出の議員が多い。避難区域の中でも放射線量が低い小高区の中心部などでは、事業再開などのため早期の解除を期待 する声も高まっている。同日午後開かれた避難区域の行政区長への説明会では、ある行政区長が「帰還を予定していない大多数の住民から意見を聞けば、解除へ の反対が多数派になるのは当然」と述べ、国の判断で早期解除するよう求めた。

JR小高駅周辺では4月以降、複数の医院や飲食店などが相次ぎ再開。桜井市長は、小高区内への大型スーパー出店に向けて国と協議していることや、JR常 磐線原ノ町−小高間の試験運転が来月にも始まることを説明し、生活インフラの整備も徐々に整いつつあると強調した。

住民の賛否が割れるなか、7月に予定される相馬野馬追を地域復興のシンボルとして印象づけたいのが市執行部の意向だ。不動産などの賠償額の算定は東日本 大震災が発生した2011年の「3月11日」が起点になるため、今後は解除日で賠償額に差が出る「7月11日の前か後かでの綱引きになる」(市幹部)可能 性が高い。【大塚卓也】

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