2016/05/02

宮城/指定廃棄物 基準値以下は市町村処理?反発

2016年05月02日 河北新報
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201605/20160502_11004.html

東京電力福島第1原発事故に伴い、宮城県で発生した放射性物質による汚染廃棄物の処理問題が迷走している。環境省の放射能濃度再測定で、指定廃棄物の大半が国の基準値(1キログラム当たり8000ベクレル)を下回ったことが判明。3月の市町村長会議では、一般廃棄物として処理責任を転嫁される形となった首長から国や県への批判や要望が噴出した。公開された議事録を基に主な論点を整理した。

<国への不満>
「県内に4万3000トンある一般廃棄物の処理も進んでいない。基準値を下回ったことで、市町村処理への流れが加速するのではないかと不安だ」。布施孝尚登米市長は、会議に出席した井上信治環境副大臣らに訴えた。
伊藤康志大崎市長も「『再測定で濃度が下がったから一般廃棄物として処理できる』と言われても、現場が理解できると思うか。法解釈だけで話を進める国には、地域の視点が欠けている」とかみついた。
環境省が実施した再測定の手法にも疑問の声が上がった。佐藤勇栗原市長は「きちんと内部まで測定したのか。放射能濃度の高いものほど内側にあり、表面だけ測れば濃度が低くなって当然だ」といぶかった。

<どこが主体>
市町村が処理するのではなく、県が主体となって焼却などを進めるよう求める声が相次いだ。
小関幸一七ケ宿町長は「個別に調整しても解決しない。県が市町村の意見を聞きながら進めてほしい」と要望。「県による仮設焼却施設の建設は検討できないか」(佐藤仁南三陸町長)との提案もあった。
処理の枠組みを検討する過程で、安全に対する説明責任の重要性を指摘したのは菅原茂気仙沼市長。「(他のごみと廃棄物を)混ぜて焼却し、放射能濃度を下げることに疑問がある。県民に対し、科学的にきちんと説明しなくてはならない」と強調した。

<最終処分場>
最終処分場候補地の栗原、加美、大和の3市町が返上を要望し、村井嘉浩知事は当面の議論を実質的に棚上げする考えを示している。
現地調査を拒み続けた猪股洋文加美町長は「県内1カ所への集約は非現実的だ」と従来の主張を繰り返し、浅野元・大和町長は「原発事故が起きた5年前とは状況が変わった。最初に決めたことにこだわらず、状況に応じた方策を考えてほしい」と念を押した。

閉会のあいさつで村井知事は「国に言いたいことは山ほどあるが、言い出したら前に進まない。県も市町村も一緒になって問題を片付けたい」と呼び掛けた。

[汚染廃棄物の処理問題]原発事故後に定められた特別措置法に基づき、1キログラム当たり8000ベクレル超は指定廃棄物として国が処理責任を負う。8000ベクレル以下は廃棄物処理法による一般廃棄物として市町村が処理を担う。ただ、市町村や広域行政事務組合が持つ焼却施設の処理能力、住民理解を得る難しさなど実施へのハードルは高い。



指定廃棄物や基準値以下の廃棄物処理について協議した市町村長会議。
非公開となった後、議論百出となった=3月19日、仙台市青葉区







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